東京オリンピックが終了すると、晴海の選手村の宿泊棟が外枠だけをそのままにして居住用マンションとしてリフォームされる。
東京都心部のマンションとして、注目を集め、既に販売開始している「晴海フラッグ」です。
三井不動産レジデンシャルを中心とした大手11社からなる、巨大なマンションプロジェクトだ。
分譲4145戸、賃貸1487戸という非常に大きなプロジェクトとして注目されている。
不動産業界に30年間、身を置いてきた立場から、果たして買うべきなのか、あるいはやめた方が良いのか、掘り下げてみます。
晴海の選手村跡地のマンションはプロとしては要注意とみてる
先に結論を言えば、私は専門家の立場から考えると、この時点で、このマンションを購入することは、微妙であるとみています。
リスクが高いと考える要素がいくつかあります。
選手村跡地マンション(晴海フラッグ)の購入が微妙である理由
大きな理由は2つあります。
1)首都圏の分譲マンション市況が落ち込んでいる
2)資産性あるマンションの要件を満たしていない
この2つの理由から、「晴海フラッグ」が買うべきなのか、と専門家としての意見を問われると、「微妙」という答えになるのです。
「微妙」というのは、リスクを承知で購入するのであれば、「購入すべき」ということです。
ただし、リスクを恐れるのであれば、やめた方が良いということになります。
まず、理由の2つについて解説します。
理由の1:首都圏の分譲マンション市況が落ち込んでいる
首都圏のマンション市況が不調であることが理由です。
別の記事「不動産価格の下落は始まってます!東京オリンピック開催までもたない?!」と「マンションの値下がり始まってる|2020年表面化する」でも、紹介していますので、ご参照下さればと思います。
2018年をピークに、首都圏のマンション市況は、悪化を続けています。
一つは、新築マンションの完成在庫が増えていることです。
完成在庫の増加
新築マンションの完成在庫数というのは、マンション市況を判断する重要な指標の一つです。
大手不動産会社は、ある程度の完成在庫は、「あって良い」と考えています。
それは、完成在庫がまるでないということになれば、それはマンションを安く売ってしまい、売れすぎてしまったことを意味するからです。
それは、利益の最大化を狙う企業の考えでは、失敗になります。
ですから、「即日完売」が続くようなら、企業は利益を損失したと考えます。
現状は、2014年以降、毎年増加を続けて、ついに2019年12月には、5年前の完成在庫数の2倍を超えてしまいました。
完成在庫数が増えると、当然ながら「完成在庫の値引き販売」が始まり、マンションの資産価値を下げていきます。
価格の下落
新築マンションの平均価格は、2018年にバブル期の水準まで上昇した後、毎月ダウンと微増を繰り返しつつ、少しずつ下がり始めています。
目に見えた「大幅下落」には至ってはいませんが、少し下落を始めています。
実際には、首都圏のマンションデータは、東京都の他に、神奈川・千葉・埼玉が含まれます。
エリアで見ますと、都心の中心部以外の販売価格は、明確に下落傾向を示しています。
つまりマンション市況の悪化は、周辺部では始まっているのに、都心の中心部だけが上昇していることで、平均価格の推移としては、少しずつ下がり傾向を保っているという状況なのです。
ですので、都心の中心部以外は資産価値の下落が始まっている状況にあります。
理由の2:資産性あるマンションの要件を満たしていない
不動産には、資産としての価値があります。
マンションの場合は、その指標はかなり明確です。
マンション自体の機能性の他に、「交通(駅が近い)」「周辺環境(利便施設・住環境)」が資産性を決める重要要素です。
この「晴海フラッグ」の場合、マンションの資産性を決める重要要素の1位である「駅が近い」という要素が、欠けています。
マンションの場合、駅が近いことの重要度は非常に高いのです。
それは、中古物件として売買される場面で明確になります。
多少の古さや物件自体や間取り設備仕様などのマイナスポイントがあっても、「駅に近い」という要素がずば抜けていると、それだけで価格は高く評価されます。
「晴海フラッグ」は、最寄りの駅が、都営地下鉄大江戸線「勝ちどき」であり、マンションからの距離は徒歩25分あります。
確かに「都心である」という価値はありますが、駅までの距離が徒歩25分というのは、あまりにも遠すぎるということです。
晴海の選手村跡地のマンションを購入した場合のリスクを考える
リスクを承知した上で購入するのであれば、「購入すべき」と前述しました。
考えられるリスクは2つあります。
1)将来、もしも中古物件として売却することがあった場合の価格の下落が大きいかのうせいがある
2)入居可能となるのが、2023年であり、万が一その間にローンの金利が上がれば、負担が大きくなる
解説します。
将来、万が一中古として売却するときの価格が安くなる
購入時点で数年後に売却をするかも知れないと思いつつ購入する人は、ほとんどいません。
しかし、現実としては、中古物件は非常にたくさん存在しています。
それぞれの人生の中出、想定外のことが起きているから、中古物件があると考えるべきなのです。
では、どの位の割合で、中古物件が生まれていくのか、といいますと、30年間の経験値ベースの数値があります。
信じられないかも知れませんが、完成した翌年から約2%の割合で毎年中古マンションが発生していきます。
晴海フラッグの場合、4100戸を超える戸数が分譲分です。
計算上は、毎年80戸の住戸が、中古マンションとして売却されていきます。
その時に、「駅に近くない」という評価がありますので、価格が安くなる可能性があるということです。
入居開始が2023年でありローン金利が不透明
現在の住宅ローンの金利は、現時点で、最低基準を継続しています。
ほんのわずかな上昇を見せている金融機関も一部ありますが、ほとんど最低基準を続けています。
実は、日銀の金利政策は、政府の意向に沿ったものであり、金融機関はかなりの負担を強いられ続けています。
2020年の段階で、このままあと1〜2年現在の金利が続けば、倒産する金融機関がでてくるともいわれています。
ですので、金融機関の金利アップは、既にいつ起きても仕方が無い状況にあります。
しかし、晴海フラッグの場合、入居開始が2023年ですので、ローンの金利は今の金利ではなく、3年後に確定します。
非常に不透明な状況にあるということです。
まとめ
以上、晴海フラッグを買うべきとはいえない理由と起こりえるリスクについて、業界経験30年の立場から、専門家として解説をしました。
将来の売却リスクとローン金利に、目をつぶって、購入を決められるのか、どうかが分かれ道と考えます。
繰り返しになりますが、購入時点で売却を前提と考える人は、あまりいません。
しかし、現実には、想定外のことがあって、中古物件として売り出されています。
世の中にある中古物件の3割ほどは、相続関連です。
しかし、その他の7割は、考えていなかった状況になり、中古として売り出されています。
ですので、予定は無くとも、売却の可能性を無視して選択するのは、ハイリスクといえます。