日本郵政の労働組合が正社員の有給削減を容認

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日本郵政グループの労働条件に関する最新のニュースをお届けします。

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日本郵政の労働組合が正社員の有給削減を容認

2020年10月に最高裁が正社員と非正社員の間に不合理な格差があると判断したことを受けて、日本郵政グループは夏期・冬期の有給休暇の見直しを提案しました。その内容は、期間雇用社員には1日ずつ有給休暇を与える一方、正社員は1日ずつ減らすというものです。

これに対して、日本郵政グループの最大労組であるJP労組は、正社員の基本給を月額で一律3200円引き上げることを要求しました。会社側はこれを受け入れ、4月から半分の1600円分を実施しました。そして、本年2023年5月24日にJP労組は、会社提案の受け入れを決めました。これにより、夏冬の有給休暇はすべての社員に1日ずつとなります。この変更は2023年10月から適用されます。

この記事では、この労働条件の見直しについて、以下の観点から分析します。

– なぜ最高裁が不合理な格差があると判断したのか
– なぜ会社側は有給休暇の削減を提案したのか
– なぜ労組側は基本給の引き上げを要求したのか
– この見直しの影響はどうなるのか

最高裁が不合理な格差があると判断した理由

最高裁が不合理な格差があると判断した背景には、同一労働同一賃金の原則があります。これは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。厚生労働省によると、2022年における雇用形態別・男女別の平均賃金は、正規雇用男性が月額約40万円、正規雇用女性が約25万円、非正規雇用男性が約16万円、非正規雇用女性が約13万円でした。このように、正規雇用と非正規雇用では賃金水準に大きな差があります。

労働条件の差異

しかし、賃金だけでなく、労働条件にも差があります。例えば、有給休暇です。有給休暇は、労働基準法で定められた権利であり、勤続6か月以上で10日以上付与されます。

しかし、実際には、非正規雇用社員は有給休暇を取得しにくい状況にあります。厚生労働省によると、2022年における有給休暇取得率は、正規雇用社員が51.9%であるのに対し、非正規雇用社員は22.9%でした。また、取得日数も正規雇用社員が8.8日であるのに対し、非正規雇用社員は3.7日でした。

最高裁の判決

このような状況を受けて、2020年10月に最高裁は、「郵便局勤務者等待遇改善訴訟」という裁判で重要な判決を下しました。

この裁判では、郵便局勤務者やゆうちょ銀行やかんぽ生命保険等で働く期間雇用社員ら約1万人が、「同じ仕事をしているのに正社員と比べて賃金や退職金などが低い」として国や郵政グループ各社に損害賠償を求めていました。

最高裁は、「期間雇用社員と正社員とでは業務内容や責任度などに差がある」として賃金や退職金などの請求を棄却しました。しかし、「夏期・冬期の有給休暇や通勤手当などでは不合理な格差がある」として一部請求を認めました。特に夏冬の有給休暇では、「期間雇用社員に与えられていないことは違法である」と明言しました。

会社側が有給休暇の削減を提案した理由

最高裁判決を受けて、郵政グループ各社は今年の春闘で夏冬の有給休暇の見直し案を示しました。その内容は、「期間雇用社員に1日ずつ有給休暇を与える一方、正社員は1日ずつ減らす」というものです。これは、「同一労働同一賃金」ではなく、「同一賃金同一労働」
という考え方に基づいています。

同一労働同一賃金

「同一労働同一賃金」という考え方では、「同じ仕事をしている人たちに同じ待遇を与える」という原則です。しかし、「同じ仕事」をどう定義するかや、「同じ待遇」をどう算出するかなどについては議論があります。また、「同じ仕事」でも「異なる能力」や「異なる貢献度」がある場合もあります。

同一賃金同一労働

「同一賃金同一労働」という考え方では、「同じ待遇を受けている人たちに同じ仕事をさせる」という原則です。つまり、「待遇」から「仕事」を逆算する方法です。「待遇」は「賃金」だけでなく、「福利厚生」や「労働時間」なども含みます。「待遇」が異なれば「仕事」も異なって当然だという考え方です。

郵政グループの主張

郵政グループ各社は、「同一賃金同一労働」の考え方から、「期間雇用社員と正社員では賃金水準や福利厚生等に大きな差があるため、有給休暇も同じ日数では不公平だ」と主張しました。

「期間雇用社員に1日ずつ与えることで法的義務を果たす一方、正社員から1日ずつ減らすことでコスト削減や業務効率化を図る」というのが会社側の主張です。

労組の反発

しかし、この提案に対して、労組側は反発しました。労組側は、「正社員の有給休暇を減らすことは、労働者の権利の侵害であり、健康やワークライフバランスに悪影響を及ぼす」と反論しました。「期間雇用社員に有給休暇を与えることは評価するが、正社員から取り上げることは許せない」というのが労組側の主張です。

そこで、労組側は、正社員の有給休暇を減らす代わりに、正社員の基本給を月額で一律3200円引き上げることを要求しました。これは、「有給休暇の価値に相当する額」として算出したものです。会社側はこれを受け入れ、4月から半分の1600円分を実施しました。そして、5月24日にJP労組は、会社提案の受け入れを決めました。これにより、夏冬の有給休暇はすべての社員に1日ずつとなります。この変更は10月から適用されます。

JP労組の執行部は「正社員の賃金改善を実現するとともに、非正規社員との待遇格差を是正するために、やむを得ない判断を下した」とコメントしている。

一方、この提案について、正社員からは「有給休暇が削減されることで、プライベートな時間の確保が難しくなる」といった声も上がっている。

背景

日本郵政グループは、日本最大の郵便事業者であり、約40万人の従業員を抱えている。このうち、正社員は約23万人、非正規社員は約17万人となっている。

正社員と非正規社員の待遇格差は、長い間問題視されてきた。特に、有給休暇については、正社員は年間20日、非正規社員は年間10日と、大きな差があった。

2020年10月、最高裁判所は、この有給休暇の差が不合理であるとの判決を下した。この判決を受け、日本郵政グループは、正社員の有給休暇を非正規社員と同じ日数に削減する提案を行った。

今後の影響

この見直しの影響はどうなるのでしょうか。一方では、期間雇用社員に有給休暇が与えられることで、彼らの待遇改善やモチベーション向上が期待されます。また、会社側はコスト削減や業務効率化が図れると考えています。

しかし、他方では、正社員の有給休暇が減らされることで、彼らのストレスや疲労が増加し、生産性やサービス品質が低下する恐れがあります。また、基本給の引き上げは一律であるため、能力や貢献度に応じた評価が失われる可能性もあります。

このように、郵政グループの夏冬の有給休暇見直しは、「同一労働同一賃金」と「同一賃金同一労働」という二つの考え方が対立する事例と言えます。今後もこの問題は他の企業や業界でも起こり得ます。どちらの考え方が優れているかは一概に言えませんが、重要なことは、労働者の権利や福祉を守りつつ、企業の競争力や成長力を高めるバランスを見つけることだと思います。

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